現代のフランス美術を代表するアーティスト、フィリップ・パレーノ(Philippe Parreno)の作品集。
「展覧会は、オートマトン(人工の自動機械)のように、多種多様な時間性、リズム、旅程、持続性を生み出すべく、あらかじめ台本が用意された空間として計画されている。来場者は音とイメージの出現と編成…つまり、精神的なコレオグラフィー(振り付け)に導かれ、この空間を案内されることとなる。」ーフィリップ・パレーノ
作者は芸術作品の制作そのものよりもその一作がどのように公衆の場で展示されるのか、そのダイナミクスに関心を示しており、作者が手がけた映画作品やインスタレーション、パフォーマンス、テキスト作品では、典型的な展示スペースにて用いられる方式が覆されている。そのプロセスの中心にあるのは展覧会の構成であり、様々な形式からアプローチし、個々の作品の集合体というよりは論理的にまとめられた一つのオブジェとして、その展示体験を再定義している。
本書は、2015年6月から8月にかけてニューヨークの「パーク・アベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)」のスペースにて開催された「H {N)Y P N(Y} OSIS」展と、2015年10月から2016年2月までミラノの美術館「ピレリ・ハンガービコッカ(Pirelli HangarBicocca)」で開催された「Hypothesis」展に伴い刊行された。
前者はキュレーターであり、ロンドンの「Serpentine Galleries」でアーティスティック・ディレクターを務めるハンス・ウルリッヒ・オブリスト(Hans Ulrich Obrist)と、ニューヨークの複合文化施設「ザ・シェッド(The Shed)」のファウンディング・チーフ・エグゼクティブ&アーティスティック・ディレクターであるアレックス・プーツ(Alex Poots)がキュレーションし、「バードカレッジ・センター・フォー・キュラトリアル・スタディーズ(the Center for Curatorial Studies at Bard College)」のエグゼクティブ・ディレクターであり「バード大学ヘッセル美術館(Hessel Museum of Art, Bard College)」のファウンディング・ディレクターであるトム・エクルズ(Tom Eccles)をコンサルティング・キュレーターに迎えて開催された。
後者は、過去「テート・モダン(Tate Modern)」のインターナショナル・アート(映像)部門のシニアキュレーター、「ピレリ・ハンガービコッカ」のキュレーターを努め、現在はミュンヘンの現代美術館「ハウス・デア・クンスト(Haus der Kunst)」のアーティスティック・ディレクターであるアンドレア・リッソーニ(Andrea Lissoni)がキュレーションした。リッソーニは、2016年10月から2017年4月まで「テート・モダン」内「タービン・ホール(Turbine Hall)」で展開されたパレーノの没入型作品においてもキュレーションを担当している。
作者の作品の豪華かつ批評的な概観を収め、アーティストのシリル・べジャン(Cyril Béghin)、編集者であるモリー・ネズビット(Molly Nesbit)、美術評論家のブライアン・オドハティ(Brian O’Doherty)、小説家のアダム・サールウェル(Adam Thirlwell)によるエッセイと、ハンス・ウルリッヒ・オブリストとアンドレア・リッソーニによる二つのインタビューを収録。
本書は、現代アートシーンにおいて最も高い影響力とカリスマ性を有する作家のひとりである作者を研究するにあたり、極めて貴重な資料となる一冊である。
hardcover
364 pages
170 x 240 mm
color, black and white
2017
published by MOUSSE PUBLISHING