サウンドを通して「フルクサス」の世界的遺産を紹介する一冊。本書は2019年9月から2020年1月までロンドンの「ホワイトチャペル・ギャラリー(Whitechapel Gallery)」で開催された展覧会に伴い刊行された。
グランドピアノを使って音を生むにはどうすれば良いのだろう。ピアノの蓋を開き、木製のブロックを楽器の内側に並べ、一つが倒れて雑音が出るようにするのか、それとも鍵盤の上に乾燥した豆を落とすのか。「フルクサス」のコンセプチュアル・アーティストであるジョージ・ブレヒト(George Brecht)は、代表作の一つである「Incidental Music」において、一度に何人かの人々がピアノと触れ合う方法を実演するように仲間のアーティスト等に伝えた。
「フルクサス」の活動は1960年代、日常的な素材を使い実験的な「ハプニング」を演出するアーティスト、ミュージシャン、パフォーマーたちの国際的なネットワークとして世に現れた。反アカデミックであり、平凡であり、全ての人に開かれた創造性というものに向けた立場を共有していた。
ジョン・ケージ(John Cage)、フィリップ・コーナー(Philip Corner)、ディック・ヒギンズ(Dick Higgins)、アリソン・ノウルズ(Alison Knowles)、ジョージ・マチューナス(George Maciunas)、クレス・オルデンバーグ(Claes Oldenburg)、オノ・ヨーコを含む、「フルクサス」の音楽やサウンドアーティストたちの興味の対象を、パフォーマンス、楽譜、レコード、そして「ルイージ・ボノット・コレクション(Luigi Bonotto Collection)」品を介して掘り下げる。アーティスト陣による公開イベントは、従来の音楽の形式と内容を再考するものであり、楽譜へのアプローチも同様に画期的であった。伝統的な楽譜の代わりに、グラフィック、詩、ビジュアル・アートに基づいた記譜システムを考案したのである。
softcover
224 pages
170 x 240 mm
color, black and white
2020
published by DANILO MONTANARI EDITORE